高校の理系科目の中で、地学は最もマイナーと言えると思います。
かろうじて文系の方が地学基礎を共通テスト(旧センター試験)で利用する程度で、理系で地学を選択する人は本当にごく少数です。
その証拠に、僕は国立大学の地球科学(=地学)科に在籍していましたが、入試で地学を使って入ってきた人は1割にも満たなかったと思います。
当然、これだけ高校地学の学習者が少ないと、市場に出回る参考書もほとんどありません。
そんな中、おそらく市販されている参考書の中で唯一地学基礎・地学の両方が含まれるのが、今回紹介する「ひとりで学べる地学」です。
始めに言っておくと、かなりの良書だと思います。
初学者がいきなり本書から学んでいくことができますし、この本を使って旧帝大に受かる人もいるほど難関大にも通用します。
とはいえ実際に本書で勉強してみると、完全に本書のみで勉強していくのは厳しいと感じました。
今回は「ひとりで学べる地学」の良い点・惜しい点を実際に本書で勉強してみた筆者が紹介していきたいと思います。
良い点
要点がよくまとまっている
学校の教科書もとても優秀な教材だと思います。
しかし、こと受験勉強においては、教科書メインで学習していくのは難しい気がします。
なぜなら、教科書は情報量が多いからです。
どうしても文科省の定めている指導範囲を網羅的に掲載する必要があるので、内容は盛り沢山です。
だから、導入のための読み物・理解できていない部分の復習などには教科書はとても優秀だと思うんですが、載っていることを隅から隅まで全部学習しようとするのは並の人間には難しいし、入試の勉強には非効率だと思います。
もちろん図表や資料集はもっと情報量が多いので、メインの教材とするには不向きだと思います。
一方、ひとりで学べる地学は、本の厚さや中身を見てもらえば分かりますが、かなり情報が絞られています。
なので、重要な点のみを効率的に学習することができます。
文章は長すぎないですし、箇条書きになっていることも多いので、地学の要点まとめ本として非常に優秀だと思います。
図や表も、教科書や資料集のものなどに比べるとかなり情報量が抑えられているので、載っているものを丸々暗記する勢いで学習してしまって良い気がします。
ただ、後述しますが、もちろん簡略化されている分理解しきれなかったり、疑問が出てくることも多いと思いますので、本書を使って勉強する時は教科書や資料集を辞書的に使うと良いと思います。
問題も載っている
地学は暗記の比重がそこそこ重い科目なので、はじめから問題集をがっつり解くよりは解説を頭に叩き込む方が学習効率は良いように思います。数学や物理は逆に問題を解きまくった方が良いと思いますけどね。
しかし、そうはいっても地学には計算や図から読み取る問題も多々あります。
なのである程度は問題を解かないと理解しづらい項目というのはあるのですが、幸いにもひとりで学べる地学にはちゃんと章ごとに問題も載っています!
決して豊富とは言えないですが、暗記メインの地学の学習においてはこのくらいが必要十分なのではないでしょうか。
センサー地学などで問題を解きまくるのもありだとは思いますが、最小限の努力で結果を得たいなら本書の方が無駄が無く優れているように感じます。
大学受験では本書のみで学習して旧帝大に受かった方もいるくらいですから、本書+大学の過去問演習でほとんどの入試に対応できるはずです。
薄いけど、内容は充実してる
本書は問題部分やさくいんまで全部含めても300ページ未満なので、結構薄い本です。
しかし、文章に無駄がなく要点のみで構成されているので、意外と1ページあたりから学習できることは豊富です。
上でも述べたように、教科書や図表に比べれば情報は絞られていますが、ちゃんと押さえるべきところは網羅されている印象です。
惜しい点
本書のみで初学者が学習するのは厳しい
上でも述べたように、本書はどちらかというと要点のまとめみたいな本なので、書名に反してこれのみで学習するのは向いていないと思います。
ちょっと言葉足らずに感じたり、図に書いてあることの全てが説明されていなかったりするので、個人的には教科書や資料集、ネット情報を辞書的に使うのがベストだと思います。
あくまで本書は内容を頭に入れるメイン教材としての立ち位置で、理解を深めるために教科書などをサブ教材として使えば良いと思います。
一方、説明が簡潔なだけで特別難しい事柄が書いてあるわけではないので、初学から図表などと併用しながらいきなり本書を進めていくのは全然ありです。
文字が小さい場所がある
現役高校生には全然問題無いと思いますが、良い歳した大人になったら結構致命的な欠点だと思います笑
具体的には、図や表の中の文字が小さすぎたり、どこを指しているのか曖昧なことがあります。
紙面の都合上仕方ない部分はあるとは思います。
そんな時におすすめなのはもちろん資料集ですね。
本が大きいので図や表もしっかり見やすく載っています。
図やイラストで説明不足な箇所がある
個人的に、図に書いてあることがら(色分けや矢印など)については全部説明が付いてないともやもやします。
しかし、なぜか稀に説明がどこにも載っていないものがあったので、ちょっと不親切かなと思いました。
まあこの場合も資料集などを参照すればあまり困ることはないのですが一応紹介させていただきました。
高校生向け参考書としては値段が高い
あまり学習書の値段にこだわる人はいないと思いますが、高校生向けの大学受験用参考書としては、2000円以上するので比較的高額です。
地学の参考書の需要が低すぎたり、全ページフルカラーなこと、紙質が教科書のように良いことがおもな理由だと思います。
しかし、大学の専門書の値段に比べれば全く些細なことではあります。
もう一度読む数研の高校地学と比較
「ひとりで学べる地学」の類書として、「もういちど読む数研の高校地学」という、高校地学界隈では貴重な高校地学基礎・地学を1冊にまとめた本があります。
ただし、参考書というよりもこれは良くも悪くもほとんど教科書です。
実際地学基礎・地学それぞれの教科書を分野ごとに再編成して、あと読みやすいように口調を若干マイルドにしただけの本だと思います。
元が教科書なので上で述べたように情報が網羅的ですし(そこが良い点でもありますが)、問題に詳しい回答が載っていないのもマイナスな印象です。
実際400ページもありますし、全てきちんと学習するのは、よっぽど暗記の得意な人でない限り受験には非効率だと思います。
あとそもそもこれは大学受験を目的に据えた本でもありませんし。
やはり要点がまとまっていて、問題の解答もちゃんと付いている「ひとりで学べる地学」の方が受験で使うメインの参考書としてはおすすめです。
ただ、地学基礎と地学の教科書を1冊にまとめてあり、なおかつ市販されていて簡単に手に入るというだけでも、「もういちど読む数研の高校地学」には十分価値があります。
2冊の教科書をそれぞれ参照したり、入手する手間がかかったりすることを考えると、これ1冊で教科書の代わりが利くのは非常にありがたいと思います。
題名通り大学生や大人になってもう一度高校地学を読みたい人や、「ひとりで学べる地学」で学習する時の補助教材として適している本だと思います。
補足: 参考書のネット情報は過信してはいけない
僕も高校時代は熱心に受験勉強したので分かるのですが、参考書のネット情報はあんまり過信してはいけません。
こんな参考書のレビューを書いておいてなんですが、ネット記事なんてなんの資格もなく誰でも書くことができるのです。
もちろん書いてる本人は熱心に書いていると思いますし、もちろん僕もこの記事を一生懸命書いてますが、多くは客観的に精査された内容ではなく、自分の書きたいように書いているだけです。
受験や参考書情報を扱っているサイトは多々ありますが、その記事を書いている人が適当に他のネット情報を寄せ集めて書いている場合だってあります。
後、参考書の評判は基本的にある程度時間が経ってからしか広まっていきません。
なぜならその本を使用した人たちが実際に大学に受かり、情報提供をしてくれて始めて本の実績が生まれるからです。
受験の参考書なんて数年経てば新しい本がいくつも発売されますが、ネットの記事というのは一回検索エンジンで上位表示されると、年月が経ってもそんなにすぐには表示圏外に飛ばされることはありません。
また、個人サイトであげたばかりの情報というのは数ヶ月経たないとあまり上位表示されません。
つまり、ネットで評判が良い本というのは、何年も前の評判であることが多々あります。
だからネットの情報というのはこの記事も含め参考程度に考えて、実際本屋さんで見てみて自分に合うものを、評判ばかり気にせず選ぶのも大事だと思います。
終わりに
ひとりで学べる地学は、現状最もおすすめできる大学受験の地学参考書です(そもそも選択肢が他にほぼ無いけど)。
この1冊をしっかりやれば、地学の2次試験でも困ることはそうそう無いのではないでしょうか。
また、僕のように大人になってから地学を学び直したい場合にもちょうどいい1冊なので、地学に興味がある・本格的に地学を学び始めたいという方には是非オススメいたします。
マイナーな科目ながら優秀な参考書を発売してくれた清水書院・編集者の方々には非常に感謝ですね。
今回は大学受験の参考書のレビューをしてみましたが、このブログでは他にも僕がプレイしたゲームのレビューやゲームコラムをはじめその他雑記なども掲載しているので、興味がありましたら他の記事もご覧いただけるとお役に立てるかもしれません。
お読みいただきありがとうございましたm(_ _)m
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