機械たちの死闘の末に待つ未来とは…【ニーアオートマタ レビュー】

選択次第で多様な結末を迎えるマルチエンディング式

ストーリーを進めている時特定の場面でバトルに負けたり、会話の中で重要な選択肢を選んだり、指令や目的を無視して特異な行動をとったりすると、異なる展開でエンディングを迎えるのがこのゲームの特徴です。

選んだ行動によって後々の状況に変化があったり、場合によっては即座にエンディングとなり爆速でエンドロールが流れたりもします。

はたまたエンドロールかと思いきやシューティングゲームが始まったり、登場キャラが皆機械ということで予期せぬ場面でプレイが始まることもありました。

感情を持った、あるいは持ち始めている敵味方双方の機械たちがただ兵器としての役割を全うするだけの日々から変化していき、個性あふれる人格で織りなすストーリーはこの作品の醍醐味の1つなので、最初にたどり着いた結末以外にも多くの物語を見届けてみると世界観により浸ることができます。

大筋のストーリーはある程度定まっているものの、思っていたよりも沢山のエンディングが用意されていたのでかなりの大作でしたね。

別々の視点から明らかになるストーリーの謎

1周目のプレイでは2Bを操作してゲームを進めて行きますが、エンディングまでクリアしても意味深な伏線が色々残ったままで全貌は明かされない状態でした。

その後9Sの視点でストーリーを進めていくと今までよく分からなかった部分が徐々に明らかになり、更にその先でパッケージにも描かれている第三の主人公、A2の視点でもストーリーが描かれていき、物語の終末に進んでいくことで全貌が見えてきます。

戦闘に長けていて色々な攻撃パターンがある2B、ハッキングで敵を乗っ取ったりロックされたオブジェクトに干渉できる9S、挑発やバーサーカーモードでハイリスク・ハイリターンなバトルが可能なA2、これらの個性が異なる3体のアンドロイドをストーリーの進行に応じてそれぞれ操作しゲームを進めていきます。

サイドクエストによっては特定のキャラクターでしか進められないものもあり、攻略するにはそれぞれのキャラクターを使いこなす必要がありますが、レベルや装備・アイテムなどは全キャラで統一されているので個別にレベル上げなどをしていく必要はありません。

機械生命体やアンドロイドたちの人情味ある言動が辛い

人間が同じセリフを言っていたらまた違った印象だったと思うのですが、元々兵器として生まれたロボットだからこそ、彼らの人間と近い仲間意識や感情の発露にちょっと心が苦しくなる場面が多々ありました。

昔から感情を持ったAIのフィクションは数多く存在しますが、話の中心は人間と人間に作られたAIの分裂や対立を描いたものが多かった気がします。

ニーアオートマタは主人公側のアンドロイドも敵側の機械生命体も、創造主は違えど同じロボットであるという点は少し独特な設定なのかもしれません。
どちらも人間の視点とは少し違うので、良い意味で第3者目線で遊んでいる感覚です。

同じ機械同士だからこその虚しさというか、争ってることの意味を考えさせられたり、どっちの方が正義と言えるのか疑問に感じる場面が多く、若干残虐な差別的言動もあったのでしんどい気持ちになったりもしました。
この辺はCERO: Dなのも納得です。

メインストーリー以外にサイドクエストでも機械たちの色々な感情が描かれていて、強さを求める武人のような機械や姉妹思いの機械、引きこもりのような言動をする機械や組織から脱走したがるアンドロイドなど、ほとんど人間に通じる感情を持っている機械がたくさん登場します。

多彩な戦闘要素

行動の自由度は結構高く、2段ジャンプや空中回避、滑空など軽快に動き回ることができます。

序盤はやや攻撃速度に重みを感じましたが、ゲームを進めると攻撃速度や移動速度なども上がってくるのでよりスピーディーな展開のバトルを楽しむことができます。

この辺の操作感は同じプラチナゲームズのベヨネッタシリーズにも通ずる部分がありますね。

攻撃を引き付けてから回避すると一定時間周囲がスローになるプラグイン・チップ(スキル)も存在し、これを装備するとまさにウィッチタイムと同じ効果でゲームを遊ぶこともできます。

敵は基本的に数で攻めてくることが多いですが、次々となぎ倒して爆風が連鎖していく様子は凄く派手で爽快感もあります。
まあストーリーが分かってくると少し複雑な心境にもなりますが…

また2Bとは違うスキャナーモデルの9Sを操作している時は、普通の攻撃性能が低い代わりにハッキングで攻撃を仕掛けることができます。

ハッキングを開始すると簡易的な2Dシューティングゲームの画面になり、敵を全滅させるとハッキング成功となり大ダメージを与えることができるんですが、これがめちゃくちゃ強くて便利。

数秒～10秒くらいでクリアできる2Dシューティングを成功させるだけで、大したリスク無しで遠距離から確実に大ダメージを狙える上、広範囲の爆風で周囲の敵にもダメージを与えるので、スキャナーモデルと言う割に2Bを凌ぐレベルで戦闘も強いです。

しかも敵に気付かれて無い場合にハッキングを成功させると敵を味方にして攻撃させたり自分でハッキング対象を操作して攻撃したりできるので、攻め方の幅も広い高性能モデルと言えます。

独特のカメラワークで迫力がある映像表現

同社開発のベヨネッタシリーズにも似た部分がありますが、ステージのいたる場面でカメラの視点が切り替わり、2D方向に移動して戦う場面や見下ろし型の視点になる場面、高速でステージが移動しながら戦う場面など演出にこだわった迫力のある映像表現でバトルを楽しむことができます。

ストーリー上で度々出てくる飛行兵器に搭乗している時は弾幕シューティングの要領でバトルが進行し、普段とは違った戦いが要求されます。

最初は操作の切り替わりに戸惑うかもしれませんが、慣れてくると色んなゲーム性を一度に体験できて結構気に入っています。

ジェットコースターのシーンなどではずっと背景に見惚れてました笑

機械らしい独特のHUD設定

普通のゲームならオプション設定で行うようなHPゲージ・ミニマップ・ダメージ表記のON/OFFなどを、面白いことにプレイヤーの装備であるプラグイン・チップを付けたり外したりすることで調節する仕組みになっていて、いかにも機械らしいスタイルでHUDに表示する情報を調節できます。

僅かですが一応これらのHUD情報もストレージ(プラグイン・チップを装備できる領域)を圧迫するので、慣れてきて必要なくなれば外した方が他の戦闘に役立つプラグインなどを付けられる分若干有利です。

細部へのこだわりが世界観への没入度を高めてくれるので、個人的にはこういった個性的な要素は好きですね。

スキルはプラグイン・チップで強化

先の項目で紹介しましたが、この作品では普通のRPGならスキルツリーなどで強化するような項目は全てプラグインチップをストレージの空き容量に付与することで強化していきます。

プラグインチップは基本的にレベルがあり、効果の大きいものほど基本的にストレージを多く圧迫するので何を優先して装備を組むのか、試行錯誤している時間は結構楽しいです。

また同じ効果のプラグインチップでもデータ量が異なるので、データ量の小さいレアなプラグインチップを手に入れることで装備の幅が広がります。

その他ゲームを進めるとチップの合成もできるようになり、同レベルのものを組み合わせることで強化できるので理想の装備を求めて攻略していくのもシンプルにRPGらしく楽しいです。

悲哀に満ちた雰囲気やBGMも好き

人類が月に退避した後の地球は、人類の生活に関わる遺物や建築物が色々な場所に廃れた状態で残っており、文明崩壊後の景色が見渡す限り広がっています。

加えて各地のフィールドでは儚げなボーカルの入ったBGMが流れており、哀愁漂う雰囲気がとてもよく表現されていて、散歩しているだけでも引き込まれるクオリティです。

しかもストーリーの進行に応じて各地のフィールドの雰囲気や敵・BGMにも変化やアレンジがあり、たまに訪れてみると違った景色を味わえます。
こういう部分の作り込みもとても好印象ですね。

公式サイトの説明通りほとんどの機種でちゃんと高フレームレートに対応しており、美しい景色を快適に楽しむことができます。

本作は2017年の発売なので8年以上前の作品になりますが、当時の時点でこの画質・パフォーマンスでこのグラフィックを実現できていたんですね。
当時の僕は全くゲームに触れていませんでしたが、もうこの時点である種完成形と言いますか、個人的にこれ以上求めることもないレベルのクオリティだと感じました。

まあグラフィックに費やすリソースに限界は無いですしもっと綺麗にしようと思えばできるのは分かるんですが、感動するような進化の余地はもう無いだろうなと映画などのCGを見ていても個人的には思いました。

死ぬと義体がその場に残るソウルライクなシステム

力尽きた時に所持していたデータやアイテムが義体(ボディ)と共に力尽きた場所に残されるシステムとなっており、損をしないためには取りに戻る必要があります。

本作ならではの要素としては、ただアイテムやお金を回収するだけでなく、壊れた義体を修理してNPCとして共闘させることもできるようになります。

ゲームオーバーの単なるペナルティとしてだけではなく、回収しに行くことで少しリターンも得られるようになっているんですね。

他にもオンラインに接続しておけば他のプレイヤーが力尽きた場所に義体が表示されるようになり、回収することで一時的にプレイヤーを強化できたり、黙祷して力尽きていたプレイヤーに報酬を送ったり、義体を修理してNPCとして共闘させることもできるようになります。(修理した義体が敵になる場合もある)

このオンライン要素はPSプラスに加入していなくても使えますし、大きなデメリットも無いので活用していくと有利だと思います。

武器の種類が多種多様

武器には小型剣・大型剣・槍・格闘の4つのカテゴリーがありますが、同じカテゴリーの武器でも攻撃パターンや特性が異なり個性的で面白いです。

敵の弾を吸収して回復できる武器、一定時間溜めると火力が上がる武器など、武器の特性によって得意な立ち回りも変わってきます。

9Sは1つの武器しか装備できませんが、2BとA2に関しては弱攻撃と強攻撃にそれぞれ違う武器を装備できるので、組み合わせの幅は広いです。

また異なる装備を2セット登録しておくことができ戦闘中もすぐに切り替えられるので、より高みを目指すなら切り替えながら戦うのも有効です。
まあ僕はあまりゲームが上手くないので武器の切り替えはそこまで使いこなしてませんでしたが、攻略に差し支えるようなことはありませんでした。

プレイヤー自身の装備の他にも随行支援ユニット「ポッド」にも色々攻撃手段があり、最初から使えるガトリングのポッド以外にも、ミサイルを撃つポッドなど個体ごとに異なる攻撃方法が備わっています。

またそれぞれのポッドには奥義とも言えるポッドプログラムを自由に装備することができ、初期開放のレーザー以外にも、周囲に斬撃を浴びせるミラージュや重力で敵を一箇所に引き寄せるグラビティ、敵の元へ一瞬で移動できるワイヤーなど多種多様なポッドプログラムが用意されています。

アンドロイド自身の武器攻撃とはほとんど独立してポッドによる攻撃を繰り出せるので、両方を使いこなすことで絶え間なくダメージを与え続けることができます。

敵の種類も多種多様

主に機械生命体と呼ばれるロボットを相手に戦闘をしていくことになりますが、かなり色々な種類の個性的なロボットが用意されていて面白いです。

獣のような四足歩行型やヘビのような細長いもの、ドローンのような兵器に乗っているものや胴体に多数の砲台を装備しているものなど色々います。

また全ての種類ではないと思いますが色違いの高性能機体も存在し、攻撃方法やスピードなどあらゆる面で強化されておりなかなか手強いです。

他にも性能は同じでも地域によって特色のあるファッションをしている個体もあり、ゲームのボリュームも考えるととても色々なパターンが用意されていてこだわりを感じましたね。

もちろんボスや中ボスもとても個性的な機械ばかりで、より激しい戦いを要求されます。

フィールドの敵よりも非常に広範囲・高威力・高スピードの攻撃が多いので、回復系のアイテムは毎度沢山用意して挑んでいました。

またストーリー上のボス以外にサイドクエストでも個性的で強力な機械とバトルすることが多々あり、腕にもよりますが最も低い難易度でもそれなりにレベル上げをしておかないと全然刃が立たない敵もいました。

幸いレベル上げに関しては救済手段が用意されているので長時間地道な作業をする必要はありませんが、最大レベルでも一部かなり難しいエンドコンテンツがあり、歯ごたえを求める上級者も楽しめる内容かと思います。

カメラ距離も柔軟に設定できる

僕は画面酔いしやすい体質なので、3Dゲームでは基本的にプレイヤーキャラからカメラが遠ければ遠いほど嬉しいのですが、本作はとても柔軟にカメラの距離を調節できます。

基本的にカメラ距離を調整できるゲームではほとんど一番遠くに設定するのですが、この作品は珍しいことに一番遠くに設定すると僕でも遠過ぎると感じるくらいまで調節できてしまいます。

なのでデフォルトより少し遠目くらいの設定で遊んでいました。

動きや視点移動が結構速めのゲームなので、このあたりを柔軟に設定できるのはとてもありがたいです。

他にもカメラワークの補助機能など色々配慮されていて、多くの人に快適に遊んでもらえる仕様になっておりとても好印象です。

魚釣りもできる

おまけ要素として、各地の水辺では魚釣りを楽しめます。

本格的な感じではなく、浮きが沈んだらボタンを押すだけなので息抜きとして気楽にできます。

現実の魚に加え水中の環境に適応した機械生命体の魚も釣り上げることがあり、世界観的にもなるほどなと思いました。

ちゃんと水域ごとに異なる魚が釣れますし、種類もそこそこ多くて見た目のクオリティも高いので、メインコンテンツではない割には意外としっかり作り込まれている印象です。

戦闘ばかりで疲弊気味の時など、落ち着きたい場面にはちょうど良いかもしれません。