注: この記事は2021年4月23日に筆者が運営する別のサイトで公開したものを本ブログへ移転したものです。
The First Treeは、アメリカのDavid Wehle氏が開発・発売を手掛ける3Dアドベンチャーゲームです。
最初に言っておきますが、万人受けするゲームではなく、特に日本語ローカライズが未完全なのでプレイしても肝心の内容を理解するのが少し難しいゲームとなっています。
色々と問題点もある本作ですが、3D探索ゲームと小説を融合させたような実験的・意欲的な作品であることは高評価ですし、終盤には少し面白いシステムも用意されているので、ゲームを一通りクリアして感じたゲームの良い点・残念な点とともに紹介していきます。
因みに、僕がプレイしたのはNintendo Switch版になります。
ストーリーとシステム
ストーリーは、自分の子供を失った親キツネが行方不明の子供たちを探しに行くところから始まります。ほぼ全てこのゲームは親キツネを操作しながら進めていくことになります。
プレイヤーが視覚的に体験するストーリーは、こちらのキツネモードのストーリーです。
もうひとつメインストーリーとして、フィールドの特定のオブジェクトを調べることで発生する、キツネの世界とは別の語り手の人間(2名)によるストーリーが展開していきます。
どちらかと言えば、こちらの語り手のストーリーに重きが置かれているバランスです。
流れとしては、キツネを操作して収集物を集めながらフィールド上の光る場所に向かって進んでいき、その都度流れる語り手の物語を聞く、という感じで進んでいきます。
全部で6つのフィールドが用意されており、それぞれが少し違った景色を見せてくれます。
特定の地点まで行くと次のフィールドへ移動する仕組みとなっています。
良かった点
一度で二つのストーリーを楽しめる
本作は語り手によるメインストーリーが、なぜか親キツネの子供探しと並行して進んでいきます。
始めに語り手がキツネの夢を見たという触れ込みがあったり、キツネが掘り起こすアイテムが語り手の思い出の品だったりぐらいしか繋がりを感じませんでしたが、ポジティブに捉えると、語り手とキツネの2つのストーリーを同時に楽しめます。
ちなみに、キツネは一切話しませんし、明確に感情を示すこともありません。なぜ操作しているのか終始分からず操作していました笑。景色と音楽は美しいので苦痛ではないのですが。
音楽やグラフィックは見ていて癒される
個人的に一番の魅力はこれで、雰囲気が心地いいです。グラフィックは、ポリゴンはカクカクしてますが、光の表現や木々の色合いなどは美しいです。
例えるなら、ゼルダの伝説ブレスオブザワイルドを少し劣化させた感じです。
フィールドで流れる音楽も神秘的で聞いていて優しい気分になれます。
音楽が遮られる要素もないので、落ち着いた雰囲気のゲームが好きな人ははまると思います。
これらの視覚的聴覚的な雰囲気作りが上手いので、語り手の会話にも引き込まれやすいです。
残念な点
物語が読み取りづらい
メインストーリーともいえる語り手の話が、なかなか読み取りにくいです。語り手が主に自分の過去や父親について話をしてくれますが、音声は英語のみ。
不自然ではない日本語字幕はあるのですが、しょっちゅう長い字幕が出てくるので、じっくり読まないと物語を理解し損ねます。
また、操作しているキツネの状況とはほぼ無関係の話が進むので、文字情報だけで語り手のストーリーを理解していく必要があります。
さらに、文字だけの情報は印象が薄い上に、キツネを操作して次のポイントまで進まないと続きが始まらないので、意識して覚えてないとストーリーが訳分からなくなります。
さらにさらに、このゲームの設定で解説モードをオンにすると、フィールドに吹き出しアイコンが出てきて、触れると開発者らしき人によるこのゲームの解説を聞くことができるのですが、不親切なことに英語音声が流れるだけで、字幕もありません。
解説英語音声もがっつりネイティブの標準スピードくらいなので、はっきり言って何を言っているのか分かりませんでした(・・;)💦
この、理解できない英語音声がメインの語り手のストーリーの合間合間に挟まれることで、余計混乱してもっと理解しづらくなります笑
(1週目は解説モードをオフにしてプレイするのもいいかもしれません)
おまけに、一度発生した会話イベントは会話が終了するまで勝手に進むので、途中で停止などはできませんし、もう一度聞くこともできないので聞き逃したときはマップの始めからプレイし直すしか手段がありません(解説モードの解説は何度でも再生できます)。
なので、このゲームをフルに堪能するには、
・ある程度の長さの文字情報(会話)を追い続ける集中力+それを数時間に渡って覚えておく記憶力+ネイティブ英語が聞き取れるくらいの英語力
が最低限必要になってきます。ちょっと人を選ぶゲームと言えます。
システム面が不親切
本作はオートセーブのみとなっており、手動セーブができません。
このオートセーブが入る頻度がま~あ少ないです。
全体的には体感5時間くらいあれば終わる量のゲームボリュームとなっており、主に6つの大きめの箱庭マップで構成されています。そして、セーブはそれぞれ次のマップに入った時のみとなっています。
ゲーム自体短いですし敵が出てきたり倒されたりもしないので、そこまで大きなデメリットでもないのですが、うっかり途中で放置していたのに別のゲームに切り替えてしまったりすると悲しいです。気を付けましょう。
また、本作はせっかくメインストーリーが6つのチャプターに分けられているのに、クリアしたチャプターを後から選択して遊び直す、といったことができません。後戻り不可能になっています。
収集・探索要素がメインの作品になっているので、このあたりの自由さがあれば、ゲームの快適性が大きく上がるように感じました。
聞き逃したストーリーや探索していない場所が見つかったときに、また始めからプレイしなければいけないのは正直面倒です。
収集物については、なんの説明も入らないので、なぜ集めているのか最後のイベントまで分かりませんでした。
何となくたくさん集めていましたが、収集物は最後メッセージを入力するときの文字数制限に影響するだけです。クリアするだけなら意識して探す必要はありません。
また、収集物以外にも実は隠し要素があったのですが、そちらも全くヒントが無く、攻略サイトを見るまで存在に気づきもしませんでした。
そしてストーリーの終盤に、本作の理解度を試されるがごとくメッセージを入力する場面がやってくるのですが、ここに一工夫あり、入力したメッセージがどこかの誰かに届くようになっています。
もちろん自分にも誰かのメッセージが届くわけですが、これの表示時間が短いです。
そして書いてあるのは英語なので、全く読めませんでした。しっかり読みたい場合はスクショしておきましょう。
全体を通して、オートで進んでしまう場面が多いんですよね、本作は…。
キツネの操作性はイマイチ
最終章を除き全てキツネを操作することになりますが、動かしていて心地いい操作性ではないです。
まず、マップの広さに対して移動が遅いです。音楽や景色を楽しむためと割り切ればそんなに気になりませんが。
あと、二段ジャンプの発動受付時間が短いです。一段目を跳んだ後すぐしか受け付けてくれません。慣れればそこまで気になりませんが、他のアクションゲームをプレイした人なら違和感があると思います。
他にも、今作では数少ないアクション要素である蝶を使ったジャンプがあります。
これは、蝶に触れるとジャンプが一度だけ高くなるというものですが、数多く纏えばその分ジャンプ力があがるギミックが気づきにくかったです。
もう少し説明があると良かったと思います。
これを使った一度きりの大ジャンプのときに、空中に収集物が並べられている仕様も、コンプリートを目指す人には優しくないと思いました。グラフィック的に距離感がつかみにくいですし、もう一度蝶を集めに行くのも面倒ですから。
また不思議な挙動が多いのは確かですが、インディーゲームですので許容範囲内です。ストーリー進行における致命的なバグもありませんでしたし。
まとめ
- 美しい自然のなかを駆け巡る心地よさの中、小説を読んでるかのような気分を味わえる新感覚のジャンルを示したインディーゲームだからこその意欲的な作品。
- システムや操作性の問題、日本語音声の一部非対応などが足を引っ張ってはいるが、大きなポテンシャルを秘めている。
目立つ粗は多いものの、新感覚のゲームであり今後発展していく可能性のあるゲームのスタイルだと思いました。
英語が聞き取れないことにより全てを理解することができない点は残念でしたが、雰囲気を味わえただけでも個人的には買って良かったなと思っています。
定価1000円くらいのダウンロード専用ソフトとなっています。頻繁にセールも行われているので、遊んでみたい人は是非チェックしてみてください。
お読みいただきありがとうございました。
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